現在地はHOME  ディスコ キャリタスリサーチ コラム 就活生・採用担当者に聞いた「ブラック企業」の基準(2017年11月発行)

就活生・採用担当者に聞いた「ブラック企業」の基準(2017年11月発行)

本年、政府は「働き方改革実行計画」を発表し、長時間労働の解消や処遇改善などによる企業文化や働き方の抜本的な改革を進めている。過労死を巡る報道や人手不足感を背景に、企業側でも働き手側の目線に立った働き方改革の取り組みが増え、大学生の就職先選びの視点も働きやすさを意識したものへと変わりつつある。「ブラック企業」という言葉に敏感な学生も目立つが、ブラック企業かどうかは個人の感覚に左右される面があるため、就活生側と採用側の認識にはギャップが存在するのではないかと考えられる。
そこで本調査では、学生と企業の採用担当者の双方を対象に「ブラック企業についての考え」に関するアンケートを実施し、集計データの比較を行った。
*企業の採用担当者には、個人的な見解を聞きました。

[1] 自社をブラック企業だと思う学生の存在について/企業調査

企業の採用担当者に「自社をブラック企業だと思う就活生」がいると思うかを尋ねたところ、「大勢いると思う」と「大勢ではないが一定数はいると思う」が計30.9%と、約3 割の企業が学生からブラック企業だと思われていると感じていた。また、その割合は従業員数が多いほど増える傾向があり、300 人未満の企業と1000 人以上の企業とでは6.2 ポイントの開きが見られる。大手企業は知名度が高い分、学生の目に留まることから、「ブラック企業」と思われる機会が多いと感じる割合が高いようだ。

[2] 「ブラック企業」だと思う条件/企業調査・学生調査

「ブラック企業」だと思う条件について、学生と企業の採用担当者の双方に尋ね、調査データの比較を行った。
最も数値が高い項目は両者とも「残業代が支払われない」で、ともに8 割近くが選択(学生78.4%、企業78.5%)。続いて「セクハラ、パワハラがある」も数値が高く、企業の70.0%、学生の66.6%選択した。サービス残業やハラスメントに対する問題意識は共通しているようだ。
一方、「給与金額が低すぎる」「残業が多い」「有給休暇を取りづらい風土がある」については、学生と採用担当者の認識の乖離が大きく、学生の方が高い選択率を示した。特に、「給与金額が低すぎる」については、学生(62.9%)は企業(34.2%)の2 倍以上に上っているが、先述の通り「残業代が支払われない」が最も多くなっていることからも、学生は報酬に対してシビアに考えており、不当に安い賃金に対する警戒感が強いことがうかがえる。
全体的に、ほとんどの項目で学生の選択率が企業を上回っており、学生側の「ブラック企業」に対する不安の大きさがうかがえる。

[3] 「ブラック企業」になると思う目安/企業調査・学生調査

前項にて「ブラック企業」だと思う条件について調査したが、ここではさらに深掘りし、具体的にどの程度であれば「ブラック企業」になると思うのか、「離職率」「残業時間」「有休取得日数」の3項目について、学生・採用担当者の双方に目安となる数字を尋ねた。

(1)離職率

「大卒新卒者の入社後3年の離職率」が何割を超えたらブラック企業になると思うかを尋ねた。
採用担当者の回答で突出して多かったのは「5 割超」で、52.0%と半数を超えている。一方、学生では、「3 割超」が最も多く(32.1%)、「5 割超」は30.2%で2 番目だった。学生の方が採用担当者より比較的低い離職率を目安としているようだ。

(2)残業時間

「1 カ月の残業時間」が何時間を超えたらブラック企業になると思うかを尋ねた。採用担当者は「40〜60 時間未満」と「100〜120 時間未満」が24.7%で最も多い。過労死ラインの目安となる残業時間は月80 時間とされているが、このラインを挟んで二分している。一方、学生では「40〜60時間未満」が最多(27.2%)。
過労死ラインを下回る数を回答した割合は学生で計59.4%、企業で47.1%。学生の方が企業よりも12.3 ポイント高く、学生の方が採用担当者より短い残業時間を目安としていることがわかる。

(3)有給休暇取得日数

「年間の有給休暇取得日数」について目安を尋ねると、学生と採用担当者ともに「5〜10 日未満」が最も多く、採用担当者47.1%、学生43.6%。厚生労働省の調査によると実際の年次有休取得日数は労働者の平均で8.8 日であり(平成 28 年就労条件総合調査)、両者とも4 割以上が実態に近い日数を基準としていることがわかる。
一方で、「10 日以上」の合計に注目すると、採用担当側は計15.0%と少数にとどまるのに対して学生では計36.2%と3 人に1 人以上が10 日以上を基準としており、ここでも両者の認識の差が顕在化する結果となった。

「ブラック企業になると思う目安」は、「ブラック企業と思う条件」同様に、学生の方が企業よりも全般的に厳しい基準を目安としていることが浮かび上がった。実際に企業で働く採用担当者と就労経験を持たない学生との間で認識の差が発生するのは当然であるが、学生が抱く待遇イメージの高さは企業側にはシビアな結果ではないだろうか。企業側からは「ブラック企業という言葉が学生の間で独り歩きしているのでは」といった懸念の声が多く寄せられた。

<<企業コメント>>
■ブラック企業の問題に関する採用担当者の意見
○「ブラック企業」という言葉が先行し、何がブラック企業なのかを理解せずに、休日や残業、給
与の待遇面を中心にして判断をする学生が多い。 <建設・住宅・不動産/300〜999人>

○「社員を大切にしない」「労働の対価をちゃんと支払わない」「ハラスメントが常態化している」
この3 点は特に注意すべき点。これらは、OB・OG 訪問以外では確認できないので積極的に訪問し
て欲しい。 <商社/300〜999人>

○ニュースになるのはごく一部の企業なので、同じ業界だからといってすべての企業を敬遠せずに
一度説明会や先輩社員と話をしてみてほしい。 <フードサービス/1,000〜4,999人>

○企業も是正していくべき点はとても多くあると思う。同時に学生もどのぐらいの濃さのグレーな
ら納得できるのか自分で判断する力が必要だと思う。真っ白な企業はほとんどない。
<印刷/300〜999人>

○弊社もブラック企業と言われていますのであらゆる改革を行ない脱却したいと思います。
<ホテル・旅行/5,000人以上>

○昔と大きく価値観が変わっているため、企業側が意識を高く持つことが必要。時代の流れに乗り
遅れると、いつの間にかブラック企業の烙印を押されてしまいかねない。<マスコミ/〜299人>

■参考「ブラック企業」に対する考え方の変化(2014年の調査結果との比較)

当社では2014 年にも「ブラック企業についての考え」の調査を行っている。当時と、働き方改革の実行計画が策定された現在とでは、「ブラック企業」に対する考え方に変化が見られた。

1.「ブラック企業」だと思う条件

「ブラック企業」だと思う条件については、学生・採用担当者ともに半数以上の項目で前回調査より選択率が上昇。特に学生は16項目中14項目とほぼ全ての項目で選択率が上がっている。さらに、「セクハラ・パワハラがある」「成果を出さないと精神的に追い込まれる」「給与金額が低すぎる」「残業が多い」「有給休暇をとりづらい風土がある」の5 項目については10ポイント超上昇しており、学生の「ブラック企業」に対するイメージがここ数年で企業以上に膨らんでいることがうかがえる。

2.「ブラック企業」になると思う目安

(1)離職率

「大卒新卒者の入社後3年の離職率」が何割を超えたらブラック企業になると思うかについては、採用担当者が最も数値が高いのは「5割超」で変化がないものの、「3割超」が3年前より5ポイント上昇するなど、全体的にやや低い数字を選ぶ傾向が見られる。これに対し、学生は「3割超」が3.7ポイント減少、「5割超」が4.5ポイント上昇と、企業とは反対に3年前よりやや高い離職率を基準とする結果となった。

(2)残業時間

「1カ月の残業時間」が何時間を超えたらブラック企業になると思うかについては、採用担当者側に大きな変化が見られた。「100〜120時間未満」が3 年前より10ポイント近く減少するなど、全体的に前回調査より短い時間を回答。働き方改革の報道で、残業時間の上限に社会的な注目が集まったことと無関係ではないだろう。
一方、学生側は「60時間未満」の選択率が計47.2%から計40.8%と6.4ポイント減少。全体的に前回調査より長い時間を回答しており、離職率同様、企業と逆の傾向が見られる。

(3)有給休暇取得日数

「年間の有給休暇取得日数」については、学生側にほぼ変化がないのに対して、採用担当者の結果には大きな変化が見られた。まず3年前は「0〜5日未満」が5割を超え最多回答だったのに対して、今回は「5〜10日未満」が最多となり、1位と2 位が逆転した。働きやすさに対する企業側の考え方が変わったことで、学生との意識の差は3 年前よりも縮まった。

3年前の結果と比較することで見えてきたのは、まず「ブラック企業」だと思う条件について学生はより多くの項目を挙げ、企業を見る目が厳しくなっているということだ。しかし、具体的な目安となると学生側にあまり変動がないのに対し、採用担当者側は具体的数値への意識の変化が明らかだ。「働き方改革」に対する政策や報道がクローズアップされる中で、企業側は働きやすさや労働環境改善に向け具体的な取り組みを開始し、学生側は「ブラック企業」に対する漠然とした不安がますます大きくなっている様子がうかがえる結果となった。